2018年8月上演
『ああ、宮(みい)さん、
かうして二人が一処に居るのも今夜ぎりだ。
お前が僕の介抱をしてくれるのも今夜ぎり、
僕がお前に物を言ふのも今夜ぎりだよ。
一月の十七日、宮さん、善く覚えてお置き。
来年の今月今夜は、
貫一は何処(どこ)でこの月を見るのだか!
再来年の今月今夜……十年後の今月今夜……
一生を通して僕は今月今夜を忘れん、忘れるものか、
死んでも僕は忘れんよ! よいか、宮さん、一月の十七日だ。
来年の今月今夜になつたならば、
僕の涙で必ず月は曇らして見せるから、
月が……月が……月が……曇つたらば、宮さん、
貫一は何処かでお前を恨んで、
今夜のやうに泣いてゐると思つてくれ」
……もう、貫一さんったら、シツコいって